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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和34年(家イ)37号 審判 1959年4月08日

申立人 長岡里子(仮名)

相手方 大井明夫(仮名) 外一名

主文

相手方大井明夫は申立人に対し金五〇、〇〇〇円を支払え。

申立人の相手方大井友二に対する請求はこれを却下する。

理由

一、鹿児島県○○郡○○町長作成の筆頭者大井明夫の戸籍謄本の記載に依れば申立人は昭和二七年一二月○○日相手方明夫と婚姻し昭和二九年七月○日長女清子、昭和三一年一月○日二女和子、昭和三三年三月○○日三女久子を儲けたが昭和三四年一月○○日長女、二女、三女の親権者をいずれも相手方明夫として協議離婚の届出をなしたことが認められる。

二、当裁判所の調停の結果に当裁判所調査官山本義則の調査報告書の記載を総合すれば申立人の性格は神経症的であり相手方は姉妹の中の長男として育てられたためか稍々我儘で他人に対する思いやりが少ない様に見受けられる。申立人は昭和三三年三月○○日三女久子を儲けた後健康勝れず爾後の姙娠を極力避けようと考えて居た折柄相手方明夫は男児を儲けるまでは何回姙娠するも止むを得ない、申立人に於いて姙娠を肯じなければ他に情婦を持つて男児を儲けると申し述べたことにより申立人との間に緊張関係を醸成するに至りその後申立人の反省を促したが申立人の容るるところとならず申立人と相手方明夫との間に愛情の破綻を来し協議離婚の止むなきに至つたものでその責任は相手方明夫の方により多いと認められる。

三、されば相手方明夫は申立人に対し離婚を原因として申立人が或る期間その生活を保障する趣旨も含めて慰藉料を支払う義務があるものといはなければならない。

四、次にその慰藉料の額について按ずるのに申立人は門司市所在○○女子商業学校の出身であり相手方明夫は鹿児島○○専門学校卒業後公務員試験に合格し農林省○○○○所に勤務し月収手取り一九、六五〇円ある外昭和三三年度中の年間賞与手取り合計金四六、七四七円あるも相手方明夫は申立人との間に儲けた長女、二女、三女を引取り扶養して居り殊に三女を福岡市の原島某に預けその養育料として毎月五、〇〇〇円宛を支払つて居る、申立人は相手方明夫との婚姻期間中貯蓄した定期預金二一、〇〇〇円を所持して居る、以上の事実の外調停並に調査官の調査に現はれたその他一切の事情を考えると相手方明夫の申立人に支払うべき慰藉料の額は上述定期預金二一、〇〇〇円を別とし金五〇、〇〇〇円を相当と考える。

五、申立人は相手方明夫の実父である大井友二をも相手方とし慰藉料の支払を求めているが相手方大井友二には相手方明夫と共に申立人をして離婚の止むなきに至らしめた事実は認められず却つて申立人に対し相手方明夫との婚姻継続を懇請したものと認められるので申立人の相手方大井友二に対する本件請求は理由なきものとして却下するの外ない。

よつて主文の通り審判する。

(家事審判官 大津浅吉)

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